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幻の森井ユカゼミ『桑沢2020卒業生作品展』



みなさんこんにちは。2020年2月末、新型コロナウィルス対策により、桑沢デザイン研究所の卒業生作品展(卒展)が幻に終わりました。搬入中、突然の勧告でした。本来ならば桑沢の公式ページで、というところですが学校も休校となってしまったので、急遽私の受け持ちのゼミ生たちの作品をここ(とSNS)に公開することにしました。

本来ならば借りた什器を使ったり天井から吊ったりと、大掛かりなセッティングをもってして完成となりますので、ここに紹介するのはその一歩手前の状態ではありますが、解説でカバーしますので併せてお読みいただければ幸いです。

さて私のゼミは昼間部3年生(卒業制作科目)の『キャラクターマーケティング』です。一同、この卒展に照準を合わせ1年間進めてきました。ゼミの受け持ちは7年目ですが、この内容では初めてとなる卒展だっただけにお披露目できず本当に残念です。ご協力いただきました企業様、また校内外の皆様、本当にありがとうございました。

テーマは、

<教えたいこと・伝えたいこと・考えたいこと>
キャラクターマーケティングの手法を用い、今誰かに教えたい、伝えたい、考えたいことをデザインする。
です。

キャラクターには二つの意味があります。
1. マスコット(例:キティ、ミッキー、ポケモンなど)
2. らしさ(例:IKEAらしさ、森井ユカらしさなど)
これらに市場価値を与えるのがキャラクターマーケティングと捉え、各自解釈して制作しました。18名分あります、ごゆっくりご覧ください。


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『恐怖症タトゥー』矢島 円
あなたの恐怖症は何ですか? 意外なものに恐怖を感じている人がいます。このタトゥーは、周りの人にはわからない自分の恐怖症をあえて見せることで、ポジティブなコミュニケーションに繋げる試みです。もしかしたらあの人と自分は、同じ恐怖症を持っているかも?
ー解説ー
「ポジティブなものではなくネガティブなもので繋がる」という興味深い試みです。フェスなど知らない同士が集まる場所での会話のきっかけになります。卒展では実際にこのタトゥーをゼミ生全員(講師含)が肌に転写する予定でした。
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『好きなものってなぁに?』秋場 千晶
私たちは性別、容姿、価値観が違い、一人一人に多様性があります。あなたにとって苦手なものも、他人にとっては大好きなものかもしれません。自分らしい個性と誇らしい多様性を、たくさんのキャラクターで子供に楽しく伝えられる指人形と絵本を制作しました。
ー解説ー
樹脂粘土を用い、2つのテーブルに100体の指人形を展示します。それぞれのキャラクターの個性がわかるプロフィールを置き、キャラクターが登場する絵本の展示とその内容がわかる動画も添えました。親子や友達と指にさして遊べます。
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『うそのくつした』肥沼 帆音
「木うそ」をご存知でしょうか? 福岡県太宰府市の伝統工芸品です。日本には沢山の工芸品がありますが、あまり知られていないものも多くあります。工芸品をブランディングすることによって、よりたくさんの人に知ってもらうきっかけになればと考えて制作しました。
ー解説ー
工芸品が持つ独特な色や表情などを生かしたデザインにしています。「木うそ」にはよくないことをなかったことにする(うそであったことにする)という願いが込められているため、嫌なことがあった翌日にこの靴下を履いて出かければ気分が晴れます。
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『東北gotturiプロジェクト』植松 沙姫
「ごっつり」とは青森県南部地方のことばで「満足げな笑顔」を意味することばです。東北地方の美味しいもので全国に笑顔を届けたい。
三陸地方の伝統的なお吸い物、「いちご煮」を紹介します。
協力:株式会社 味の加久の屋
ー解説ー
ゼミ生の出身地である東北名産の美味しい「いちご煮」(ウニとアワビの缶入りお吸い物)。左下の現在のデザインから、より若い世代に届くようにリデザインしキャラクターも考え、知名度アップを狙いました。
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『隣の芝生は青い』綱分 そら
自分以外の誰かになりたいと思ったことはありますか? 誰もが一度は考えたことがあるでしょう。自分の中で深刻な問題でも、振り返ってみると無意味だったこともあります。自分以外の誰かになろうとする人たちを動物にたとえて、アニメーションを製作しました。
ー解説ー
近隣に住むゾウ、キリン、カバ。実はお互いの容姿が羨ましくてならないというショートストーリーです。3人がそれぞれ隣人に憧れている、という堂々巡りの状態をアニメーションで表現しています。3台のディスプレイに3本のアニメが同時に進行します。
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『ブラックスクールシリーズ』多田 瑛利
あなたは「ブラック校則」を経験したことはありますか? 
今なお、中学高校には理不尽な校則が存在します。この問題を改善するには大人の理解が必須と考え、"シルバニアファミリー"を用いて、ブラック校則を客観視できる大人のための知育玩具を制作しました。
参考:エポック社 シルバニアファミリー
ー解説ー
大きな箱は校舎、小さい箱は「頭髪検査セット」「黒染め散髪セット」「女の子の制服」「男の子の制服」「おもたい通学カバンセット」「学校指定下着」などブラック校則にもとづいたデザインがふんだんに施されています。実は校舎の裏がわにもドラマがある、ジオラマとしての展示です。
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『Q sleep. 〜良質な眠り〜』神田 未香
現代の病とも考えられる「睡眠障害」。原因は様々で悩む人も多い。
そんな悩みを少しでも取り除くために有効なのが、古来から伝わるお灸です。体の内側から症状を改善できるお灸の力を借りて、生活を整え、よりよい睡眠を目指すセットをブランディングしました。
協力:せんねん灸 セネファ
ー解説ー
同世代にあまり浸透していない「お灸」を、質の良い睡眠のためのグッズとして企業と連絡を取りつつ進めたデザインです。この他にリラックスした空気感のポスターが掲示されます。
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『子へ贈る化粧品セット「けわい」』後藤 わかば
「けわい」は初めて化粧をする子へ贈る化粧品セットです。
日本には子どもに関するさまざまなお祝い事があります。大人への第一歩である"初めてのお化粧"を、『けわい』と共に親子でお祝いする。それがまたひとつ、日本の文化となるように考えながら作りました。
ー解説ー
新しいお祝い事の提案です。桐箱に丁寧に入れられた化粧品と、その使い方が記されたリーフレットが添えられています。箱は重ねられた状態と、広げた状態の2通りを展示します。
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『隠されない生理用品』相川 莉緒奈
「生理用品は隠すもの」。ナプキンを購入するとき、中身の見えない袋で隠す習慣があります。そんな生理用品をインテリア感覚でディスプレイできる、ナプキンとボックスを制作しました。毎日をポジティブに過ごすため、これらが堂々と飾れるような存在になりますように。
ー解説ー
最近、生理用品(ナプキンやタンポン)を隠し持つ存在から解放するべくポップなデザインにするという動きがありますが、この作品ではそれらを入れるボックスまでをデザインし、部屋の中にインテリアとして置けるようにしたものです。
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『2014〜2017年からの手紙』竹内 萌香
100年後の未来。消滅した「手紙」の研究者となった自分のひ孫が、私が高校時代に何気なく書いていた膨大な手紙を発見しました。それらは既製の広告やパッケージに書かれていたもので、他に類を見ない奇妙で貴重な文化として公開されることになってしまったのです。
ー解説ー
高校時代「お菓子の空き箱やショップのパンフレットなど」の既製品を便箋がわりにしていたという作者のコレクションが、100年後に子孫によって発掘され、当時の文化として勝手な解釈で紹介される……という体裁のユニークな展示です。カーテン状の作品が3連と、家系図が吊るされます。
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『すうじあそびゲーム』横山 茉璃乃
小さなつまずきから始まっている算数や数学への苦手意識。「すうじあそびゲーム」は、それらが少しでも軽くなってほしいという気持ちで作りました。全国の小学生が算数を好きになれるような、それぞれ授業前の5分間に遊ぶことができるミニゲームになっています。
ー解説ー
カードゲームは「距離あそび」「分数少数あそび」「計算あそび」「時間あそび」の4種類で、来場者が実際に遊ぶことができます。短時間でできるババヌキのようなルールがベースになっています。小学校で使っている机と椅子をディスプレイ台として展示します。
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『キャラクター・オブ・ジャパン』クマガイ シズカ
日本の魅力って何ですか? 日本はみんなが思っているよりもカオスでキュートで楽しいところかもしれない! 身近な生活文化に面白さを見出してみよう! そしたらきっと☆輝け☆る!?
ー解説ー
日本が持つ混沌とした一面を表現しています。洗濯干しに吊るされたグッズはほぼ関連性のないもののはずなのに、まとまるとそこに独自のニュアンスが生まれます。天井から吊るされ、少し見上げるような位置になります。
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『シンショク』小川 真歩
平面のデザインが多い中では、あえて立体にすることにより見える世界が変わってくるでしょう。キノコのような“何か”に世界がシンショクされていく様子を、シャドーボックスの技法で表現しました。
ー解説ー
平面であるものの量を増やし、重ねて立体感を出しました。いつもとは違う表現を試みることで、新たな個性を見い出すことができます。
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『枠』天羽 舞衣
「枠」がその人らしさを育んでいます。人々はどのような枠の中にいて、どのように感じているのでしょうか。他人にとっての枠を知ることで、自分も何かを得られるかもしれません。また、枠といえば四角形であるという既成概念を覆すように、円形を多用しました。
ー解説ー
多くの人にアンケートを取り、自分にとって何が枠か、それに対してどう感じているかを調査して作品にしたものです。大きな金属製の輪を天井から提げ、繋げた円を吊るします。中には2〜3人入って読むことができます。
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『かわいいのチカラ』髙橋 胡桃
かわいいものに嫌悪感を抱く人は少ないと思います。自分に無害で、癒されるべきものであるからです。そのかわいさのチカラを検証するために、あえてネガティブな素材をとりあげ、どれほどカバーできるのかを試みた作品です。
ー解説ー
可愛さを感じる手法で、ドメスティックバイオレンスや薬物などを表現すると、見る人はどのように感じるか?という実験的な作品です。イラスト、小説の一節、立体物などを使って視覚的に訴えます。
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『葬送委員会』新井 美結
日本での葬儀は形式が固定されており、誰が亡くなっても同じような儀式が執り行われています。この作品では「香典返し」に着目して、現代のニーズに合わせてセレクトし、ブランディングしました。
ー解説ー
形式的で、正直もらってもあまり嬉しくない香典返し。「もし自分が死んだらこんな香典返しをしてほしい」というコンセプトでデザインしました。Amazonのギフトカードやバスボム、アロマキャンドルなどがラインナップされています。
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『花粉症って辛いの?』橋本 奈実
春や秋にかけて辛くなってくる花粉症。患者としての辛さがなかなか周囲の人たちに分かってもらえないという経験があったので、花粉症の特徴、苦しさなどをインフォグラフィックで表現しました。
ー解説ー
画像はクローズアップですが、3本の柱状にプリントした作品です。花粉症とは何か、その歴史から数字やイラストを用いわかりやすく伝えます。
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『ねこまくら』駒場 柚乃
猫が枕の上で眠っていることがよくあります。そんなとき、私は猫をどかさずに枕の端で眠ります。とても眠りづらいのに幸福感があるので、たくさんの人にこの気持ちを知ってもらおうと作りました。
猫のいる位置により初心者、中級者、上級者向けと分かれています。
ー解説ー
猫を飼っている人なら誰でもわかる、そっとして置きたい気持ち。羊毛フェルトを地道に刺し続け、猫の形を浮かび上がらせています。
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以上です、ご覧いただきありがとうございました!!
森井ゼミ一同(ゼミ生18名、専任:宮根先生、非常勤:森井ユカ)
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2020-02-29 09:57  コメント(1) 



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